姉の癌、苦労した遺産相続、そしてその2年後、20年の介護生活を経て、母も他界しました。
他方で、開業目指して通っていた鍼灸の勉強会もやめました。
40代半ばからかつてなく自由な身の上になり、ふわふわと動き出した結果、ミラクルがおこるまでのお話しです。
鍼灸やめてやりたかったこと
鍼灸の勉強会を辞めたことにより、
勉強会に払っていたセミナー費用、
勉強会に費やしていた時間
が新たに手に入りました。
それを使って何をやりたいか?
そこで、真っ先に思いついたのが
「農業」でした。
実は鍼灸の勉強会を辞めよう!
と決断をする少し前から
長年憧れていた田舎暮らしをしたくて
大阪府の里山にあるシェアハウスで
週末田舎暮らしに挑戦していました。
しかし、働きながら週末だけ田舎に行く生活
と言うのはなかなか体力的にも辛く
長くは続けられなかった、
と言う経緯があったのですが。
その暮らし方の中で
今までの生活では知り合えなかったような
方々とたくさん知り合いました。
そこで初めて聞いた話で、
私のそれまでの価値観は崩壊。
人生の転機はここにあったと言っても
過言ではありません。
その中で、鍼灸師の私にとって
とても印象に残ったお話がありました。
里山ということで
周辺には農業に携わる方が多く
動物の害に悩まされている
と言う話をよく耳にしました。
その中でも、深刻な被害を与えるイノシシ
でも、一見畑を掘り返し
荒らしているように見えるイノシシが
実は地下で滞った水脈をから発せられる
何か、を感知しそこを掘り返すことによって
その土地の水脈の滞りを改善している
という説がある、と言うのです。
確かイノシシが掘りかえした畑は
どろどろになっていることが多く
畑の中でも水が滞っているところを
掘り返している感はあり。
その説もあながち嘘ではないかも
と思いました。
「滞った水の流れを改善し、流れを良くする」
これって実は鍼灸が目指す治療の理論と、全く一緒なのです
鍼灸では、
「体の中で滞った水の流れを改善するため」
に、鍼を刺します(それだけではありませんが)
えー!イノシシって、畑の鍼灸師やん!
と私は、畑とイノシシの関係に
すごく興味が沸きました
それ以外にも
東洋医学の基礎理論である
陰陽五行論(いんようごぎょうろん)は
農作物が芽吹き、成長し、収穫する過程を
大変わかりやすく説明できたりもします。
そもそも天地万物の理(ことわり)
を説いた陰陽五行論
自然の中で育つ作物を収穫する
「農」との関わりはとても深いです
今まで鍼灸の勉強でしか知らなかった陰陽五行論
実際の環境ではどんな風になってるのか
見てみたい!と思いました。
…うん、やっぱり浮いたお金と空いた時間で
挑戦するなら農業だ!
農について学んで新たに知ったこと
そこでシェアハウスで
知り合った方のつてを頼りに
お米を育て、収穫するサークルに参加しました。
そして、そこでの学びで
また新たな衝撃的をうけることになったのです。
現代の農業では、
F1種と言う品種改良を重ねた作物が作られており
自然にその作物から取れた種を使って
植えても同じ野菜はできないこと
(毎年種を買わないといけない)
その種を作るために
全く雄しべのない花(花粉がない)を
人工的に作りだし
(これって動物だったら無精子ってことです)
その花の雌しべに
また人工的に品種改良した花の花粉をつけて
種をとっていること。
また、長年化学肥料や農薬を使っている畑では
土の中の有機物を分解し、
植物にとって大切な
微量元素(ミネラル)を供給してくれる
細菌が死滅してしまい、
植物は化学肥料からの栄養だけで育つこと。
そのため昔と比べて野菜の栄養価が
どんどん下がっていると言うこと
などなど。
これらの話を学ぶにつけ、
今の世の中の「農業」
に違和感を感じるようになっていきました。
もちろん、品種改良・化学肥料・農薬
のおかげで私達は
毎日食べる野菜をスーパーで気軽に
買うことができているので
安易な批判はするべきではありません。
ただ、野菜の栄養価が下がっていることにより
影で進行している栄養不足や
農薬や化学肥料によって
身体に取り込まれ続ける化学物質によって
健康問題が生じている可能性は否定できず
末端とはいえ医療に携わる身でありながら
あまりに無知だったことに衝撃をうけました。
それ以外にも
近年ふえているという発達障害や
精神疾患との関連も指摘されている農薬があり
海外では使用を禁じられたその農薬が
日本ではつかわれつづけている事実や
ミツバチがいなくなる事件
化学肥料に使われているプラスチックが
マイクロプラスチックとなって、
海に流れて出て海の生態系も破壊していること
肥料から発生する窒素化合物を含むガスが
実は二酸化炭素よりも
恐ろしい温暖化をもたらすこと
などなど。
今の農業のありかたが
地球全体の環境にも少なからず
影響を与えていることを知るにつけ。
うーん、うーーん、
今の農業ってこのままでいいの?
もうちょっと、みんながこの事実を知って
食べるものを選ぶときに
少し考えるようになったら
農業のあり方自体、変わるんじゃないのかな?
でも、こんな話、普通に生活してると、
全然つたわってこないよね。
だって、自分も知らんかったし。
どうやったら、もっとたくさんの人が
この事実を知ることができるんだろう。
私にできることってないのかな?
と言う思いが芽生えてきました。
パーマカルチャーとの出会い
身体にも地球環境にも影響を与えている今の農業。
持続不可能にしか見えない、という実態を、少しでも多くの人に知らせたい。そんな思いを持ち始めましたが。
持続可能ではない農業のあり方に疑問を抱くようになった結果、そもそも持続可能な暮らし方ってどんなの?と言う疑問も湧いてきました。
持続可能な暮らし方について調べるうち、パーマカルチャー研究所と言うブログに行き当たりました。
パーマカルチャーとは
「パーマネントアグリカルチャー」=持続可能な農業
という言葉から、作り出された造語だそうです。
おお!これまさにこれ!
と思い、そのブログからメールマガジンに登録。
でも、そのメールマガジンで語られていたのは
持続可能な農業の話ではありませんでした
メルマガ発信者の三栗祐己さんが提唱されていたのは
「遊暮働学」
という暮らし方。
遊び自体が暮しで労働で学び
ということです。
具体的に言うと
パンを作るのが楽しい人にとっては
パン作りは遊びでもあり
食べるものを作る労働であり
パンの作り方の学びであり
それが暮らしそのものである
という感じ。
そして、みんながそうやって自分の「やりたい」ことをやって
遊んで働いて学んでいれば暮らしは回っていく
=持続可能な暮らし方
…なんか、ちょっと思ってたパーマカルチャーと違うけど
…なんか、おもしろいなぁ、と思い。
三栗さん主催のパーマカルチャーオンラインスクールに入ってみることにしました。
持続可能な農、を実践している人との出会い
そのスクールで、「協生農法」という、
果樹を植え、たくさんの野菜の種を蒔き、
耕しもせず、肥料もあたえず、農薬もつかわず
家族4人と虫と鳥が食べていけるだけの恵みを得られる
「食べられる森」を6年かけて作り上げた
モリテツさん、という方に出会いました。
実際「食べられる森」に行ってみると
そこは本当に「畑」ではなく、「森」でした。
といっても、まだつくりはじめて6年ですから
木漏れ日がふりそそぐ、いわゆる「森林」という感じではありません。
どこが「森」なのか、というと。
そこでは、人間の作物を奪いに来る「害虫」「害獣」は存在せず。
皆がそれぞれ、生きているだけで、それぞれの役割を果たし、
その「森」を成立させている。
普通の森、とちがうのは
人間が適切な時期に種を蒔き、ときどき自分の通る道の草を刈り取る。
そして、その中でその恵みを食べる分だけ収穫し、
次の残すための種を採る
それだけです。
みんなが協力して生きているから協生農法
まさに持続可能な農、の在り方でした。
すごいすごいすごーい!
私もやってみたい!そんな森をつくってみたい!
その森にみんなを招待して、
農薬も、肥料もなくても、
こうやって食べ物を作れるんだよ
ってことを知らせたい。
そして、そうやってできた食べ物を食べていれば
健康問題を引き起こしてしまうかもしれない
化学物質を体にとりこまなくてよくなって
もっと元気でいられること
も知らせたい。
そんな農業をやる人が増えたら、
環境問題も解決できるかもってことも知らせたい。
そんな風に思うようになりました。
だけど~、私には土地がない。
自分の土地がないと
果樹は植えられない
果樹が植えられないと
森はつくれない
ない、ない、ない、ないない尽くしです。
とりあえずできることからやってみよう、からのミラクル
といって、腐っていてもしかたないので、
自分なりに持続可能な暮らし方に近づけるように
「あるもので楽しくサバイバルできる技術や知識を身に着けよう」
という目的で、大阪府茨木市で活動しているコミュニティ「にんげん小屋」に参加してみました。
そのコミュニティにも凄腕の「持続可能な農」に取り組んでいる農家さん、そして、持続可能な世の中がいいよね、と思っている人が集まっていました。
同じ目的をもって集まっている人がたくさんいるので
普通の友達とは話さないようなことにも自然と花が咲き
「私、鍼灸マッサージ師なんですけど。そんなすごい治療はできなくて。でも、ちょっとくらいは身体を楽にできると思うんです。だからね、しんどいなぁ、って人にマッサージや鍼をして、ついでに身体のためには食べるものって大事だよ~、どんなものを食べるかってことをもっと考えてほしいだよ~って伝えられるようなね、治療院とかできたらいいなぁとかね、思ってるんですよ」
と、甚だ、ふわーっとした夢を語ったりするようになっていました。
するとある日そのコミュニティのお仲間であるご夫妻から
「夏子さん、私達、畑と田んぼを買うのだけどね。
それにね、古い家がついてるの。
夏子さんがね、いつも話してる治療院に
使えたりしない?
家賃はいらないから」
とお声掛けがあったのです
え?
え?
え?
えーーーー!?
マジですか?家賃0円とかテレビの世界だけかと思ってたけど。
マジであるんですか?
しかも、
「田んぼも畑もいっしょにやりましょうね
お庭は自由につかってくれていいよ
果樹をうえたいんだったらそれも
やりましょう」
とのお言葉。
…もう、この話、お受けしない理由が見つかりません。
そんなわけで、家賃0円の古民家で鍼灸院を開くことが出来るようになりました。
今振り返ってみても、いったい自分の身の上に何が起こってどうしてこうなっているのか、よくわかりませんが。
こんなことも、あるんだなぁっていうお話しでした。
というわけで、ありがたくも不思議なご縁で畑も庭も田んぼもある古民家の一室をお借りして、鍼灸院を開くことになりました。
私自身の力はごくごくわずかですが、小さな一歩が今のありがたい現実につながっていったことは間違いなく。これからも、私らしく小さな一歩を積み重ねて、楽しみながら進んでいこうと思います。
そして、私が楽しんでやっていることが、誰かの役にたったり、人間だけでなく、地球に暮す生き物が暮らしやすい世界につながっていったら、こんなにしあわせなことはありません。
ここまで連れてきてくれたすべてに、感謝しつつ。
明日からもいつも通りに、働き、学び、遊び、暮らしていきます。
どうぞよろしくおねがいします。
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